今年のGWは不知火海から黒之瀬戸を通過して行けるところまで南下しよう、というツアーでした。
全国各地からフェザークラフト乗りが集まり、一両しかない「肥薩おれんじ鉄道」に集合。カヤックとキャンプ道具を持って出艇の駅に降立ちました。サポートガイドはライターのホーボージュン兄。私とジュン兄は糸島で雑誌の撮影を終えてから、朝8時博多発の新幹線で現地入り。九州新幹線は凄いです。
鉄道が海沿いに走るようになると一同愕然。海にはウサギが飛び跳ねています。しかし我々には車がありません。とりあえず予定の駅で降りて、えっちらおっちらカヤックと装備を海岸へ運び、どうしようか悩みながら組み立てました。
この連休は日本海にある寒気団のせいで全国的に悪天候。昨日の大雨のせい海水もかなり濁っています。それでもここは周囲を陸に囲まれた、一応内海。それでもこの風です。他のエリアに比較すればまだマシなほうでしょう。
全員のスキルと、ガイドの数から判断して、岸ベタでとにかく進んでみることにしました。なかなかの横風で、防波堤がある場所などはかなりの返し波で大変でした。それでも畳んだカヤックとキャンプ道具で陸上のペンギン状態だった我々も、すべての道具を組んだカヤックに詰め込めば、あとは自由の身です。波と格闘しながら漕ぎ進み、予定の野営地の5キロ手前でこの日は上陸。風裏の快適なキャンプ地でした。
二日目。朝は昨日より凪いでいますが、徐々に風は上がるでしょう。それでも昨日のメンバー(最近はメンバー、って悪い意味で使われますね!)の漕ぎから判断して出発しました。11時を回る頃には予想通り南西から風が吹きつけてきました。ラダーの無いフネは大変です。水俣のリアスの沿岸の岬ごとにいやな波が立ちますが気合でゴンゴン乗り越えて行きました。
南下するほどに海水もクリアになっていきます。2日目にして初めて漁をする漁船を見ました。この日の野営地は約35キロ先でしたが、その3キロほど手前に良さげな場所を思い出しました。最近はかつて訪れた場所でも、その場に接近しないと地図上では思い出せない事が多くなってきました。一旦上陸してしまうと、緊張の糸が切れ、この先漕ぐことは無いだろうなと思いましたが、その通りになりました!この日はみんな「風呂に入りたい」「買い出ししたい」「外食したい」と欲求まみれでしたので、頑張ったご褒美にバスで米ノ津の街で出かけ、温泉に入って居酒屋へ直行、島娘(長島産のレアな焼酎)を痛飲しました。この日の漕行、32キロ。荒れた中頑張りました。
三日目。この日はいよいよ黒之瀬戸を通過します。朝の時点では凪いでいますが、午後風が上がる可能性は高いです。予定では阿久根方面に南下する予定ですが、ここ数日の風だと恐らく大変だと考えられます。瀬戸手前では風裏になるため、判断できません。
瀬戸は下げ潮流に乗って通過予定なので、外海に出てから荒れてるから引き返す、そいうのは無理です。結局、瀬戸まで行って、流されつつ判断するしかない、ということで結論づき、出発。まあ、旅の途中、海の上で行先を決められる事ほど贅沢な事は無いかもしれません。スタート地点にクルマを置いていたりとかしたらここまでの自由度はないでしょう。それは安全性にも繋がります。私達にはこのカヤックの中の道具さえあればどこにでも行けるのです!
で、黒之瀬戸まで、出水平野沖をショートカットします。この度初の激しい凪!これまでのご褒美でしょう。と言いつつ進むと次第に向かい潮に捕まり、パドルが重たくなりました。瀬戸の転流はおそらく11時くらい。焦り始めましたが、沿岸に近づくと向い潮の反転流があり、グイグイ進みます。兎に角早く瀬戸に着きたい一心でパドルを動かしていると再び向かい潮に。もう転流が始まったようです。
予定より30分ほど遅れて瀬戸に到着。この時点で風向きから南下は諦め、北上して長島沿いに進むことを皆に伝えました。そのためには向こう岸(長島海上でミーティングしている間にも潮がどんどん早くなってきました。一部には段差もでき始めてます。ここは船舶の航行も多いので8名全員で渡るのもどうかと思い、慌ててメンバーを2班に分け、松本チームとホーボーチームで別に渡る事にしました。
ジュンさんいて良かった。
文字通り川のように流れる瀬戸をパワーで対岸に渡り一安心。これが本当に川であれば大したことない流れですが、海だとやはり緊張しますね。
このコースのハイライトはこの瀬戸を越えるといきなり南国の海になることです。幸い晴天だったのもありますが、透けて見える改定には巨大なテーブル珊瑚がたくさん。これまで何度も通過している場所でしたが、ここまで珊瑚エリアが広いとは知りませんでした。
南寄りの風もどうやら収まったようです。ここからはのんびり景色を楽しみながら長島を北上しました。目指す野営地の近くには我が愛する芋焼酎「島娘」の醸造元があるのです(ま、昨夜もしこたま飲みましたけど)。そしてその醸造元にはリアル島娘もいるのです。そりゃ頑張りますわな、という事で本日も33キロ漕いでゴール。
最終日は雨予報なので、ゴール後ビールを飲みつつカヤックを解体。翌日は雨上がりと同時に宅急便でのロジスティックが完了。温泉に入り、駅までのバスに乗りました。
フォールディングの旅というのは正に「放浪」です。海と向き合い、自然に合わせて動く事ができます。私の知る野外での遊びの中で最も自由度と、それに伴うリスクが高い遊びでもあります。つまり真骨頂な訳です。漕ぎ応えのある、楽しい旅でした。
安全に終わることができたのはタフでフレキシブルな参加者の皆さん、サポートしてくれたホーボージュン兄のお陰です。ありがとうございました。